ホモ•所得と幸せ-7

もし飢饉と疾病と戦争が無くなり、平和と繁栄を経験し、平均寿

命が延びたなら、人間は幸せになれるだろうか、残念ながら人間

はそう簡単には幸せになれないだろう。

ギリシャの哲学者エピクロスは欲求を三つに分けている。①自然

で必要なもの(健康、食事、衣服、住居、友情),⓶自然だが不必要

なもの(大邸宅、豪華な食事、贅沢な生活),③自然でもなく、必要

でもない(名声、権力),


この内自然で必要なものだけを追求し、苦痛や恐怖からは自由な

生活を送るのが良いと主張した。こうして生じる 「平静な心」を

追求するのが善とした。

エピクロスは人は簡単には幸せになれない事を気づいていたらし

い。伝統的な社会と先進国を比べても先進国は繁栄し、快適で安

全なのに自殺率が多い

ペルーやハイチ、フイリッピンは毎年自殺するのは10万人に6人

ほどだが、スイス、フランス、日本など平和で豊かな国では10万

人当たり10人以上が自殺している。

特に韓国は1085年頃は厳格な伝統に縛られ、比較的貧乏な国だつ

た、その頃は10万人に9人程度の自殺だった。ところが現在は経

済大国で教育水準も高く、安定しているにかかわらず、10万人に

36人に上る。

私達は先祖より多少幸福度は確実に上がったが、その度合は期待

を大幅に下回っている。石器時代の人は1日当たり4000キロカロ

リーのエネルギーを利用した。

この中には食物の他道具や衣服、焚き火なども含んでいた。今日

アメリカ人食べ物以外に自動車、コンピュータ、冷蔵庫、テ

レビなどの為に毎日22万8000キロカロリー消費する。これは石器

時代の人の60倍のエネルギーを使っている。だがアメリカ人は60

倍も幸せだろうか?、

飢え死にしかけた農民はパン一切れ与えられると大喜びした。し

かし高給をもらい、退屈した社員にどうしたら喜ばせてやれる

か?、アメリカは1950年代から2000年代までにGDPが2兆ドルか

12兆ドルに増えた。その結果1人当たりの所得は倍になったが

主観的幸福度は50年代の水準と殆と同じだ。

日本は1958年から史上屈指の景気拡大を果たした。実質所得は5

倍に増えた。日本人の生活様式や社会にさまざまな変化が現れた

にかかわらず、主観的幸福度は驚くほどわずかな影響しか出なか

った。どうやら幸福感というものは謎めいたガラスの天井にぶつ

かり、飢餓や疾病を無くし、世界平和を達成しても、ガラスの天

井を打ち破る事は出来ないようだ。

ホモ・ラッセルの幸福論ー8

ホモ・幸福の追求ー6