「ハーバードの人生が変わる東洋哲学」の本で「悩めるエリートを熱狂させた超人気講義」の副題があり「京大で一番読まれた本」とある。題名に惹かれてさっと一読してみました。特に特徴的なのは「孔子」と「老子」の項でしょう。孔子のところでは、西洋人が常に高遠な人類の哲学を展開するのに比較して、孔子は身近なコミュニケーションの仕方を細かく論じている。
妻との場面場面での接し方、友人、職場の交流し、礼儀や仁に高める事が人生で大切であることを述べている。この辺りはキリスト的な神が作った世界に生きると言う概念がある西洋人では、大変意外性がある事が納得する。
老子は道を説いた。道とは言葉ができる前に存在した状態で、言葉で説明出来ない、分化していない原始の状態である。天地が生まれる前から存在した混沌とした状態を言う。
あらゆるものが道から生じあらゆるものが道に返っていく。日本ではいろんなものを訓練し、深く探求する時は道という。花道、柔道等なんでも道とつけた途端に奥深く人生への探求を意味する。
その点作者の老子の哲学を解釈するところでは、アメリカに新しい概念を導入したリンカーン、ローズベルト、レーガン大統領を話題にしているが、余りに解釈が違いすぎて、びっくりする。概念の質が違うので、我々東洋人を納得させる展開にはなっていないのが残念である。
西洋では神が先にあるため、純粋に神の無い哲学を扱う事は難しいのでは無いだろうか。
もともと中国に神は存在していない。最初から神の存在を前提に考えてしまう西洋とは違う事の認識が必要である。
では中国には何があるのだろうか、中国には神の代わりに宇宙がある。全てが宇宙の法則で動いていると考える。つまり意外に現代的である。